通信

v.92とは?アナログ電話回線を活用した高速モデム通信規格の概要

v.92は、電話回線を使ったモデム通信の規格の一つで、従来の規格から通信速度や接続速度が向上している点が特徴です。

モデム同士が互いに通信する際の手続きが効率化され、接続時間が短縮されるほか、データ圧縮技術の改善により、より高速なデータ転送が可能となりました。

これにより、インターネット接続中に音声通話が利用できるなど、ユーザーにとって便利な機能が実現された規格です。

歴史的背景

アナログ通信の発展経緯

かつては、アナログ電話回線が主要な通信手段として活用され、音声通話だけでなくデータ通信も行われていました。

電話回線の帯域幅には限りがあるものの、工夫を重ねることで徐々に効率的なデータ伝送技術が開発されました。

こうした背景の中、通信の安定性や速度を向上させるための技術開発が進められ、アナログ通信の可能性が広がりました。

v.90からv.92への変遷と誕生背景

従来のv.90規格では、下り方向の最大通信速度が56kbps、上り方向は33.6kbpsであったが、新たに登場したv.92規格では上り速度が48kbpsに向上しました。

2000年7月4日に国際電気通信連合(ITU-T)より勧告されたv.92は、全二重通信を実現するために開発され、音声通話とデータ通信の併用が可能となった点が大きな特徴です。

従来の規格からの進化として、ユーザーにとってより快適なインターネット環境の実現を目指しました。

技術的特徴

通信速度の改善

下り速度と上り速度の比較

v.92規格における下り速度は従来通り56kbpsを維持しながら、上り速度は33.6kbpsから48kbpsへと向上しました。

これにより、アップロード情報の送信がスムーズになり、チャットや電子メール、ウェブへのアクセスといった双方向通信において、よりバランスの取れたパフォーマンスが実現されました。

データ圧縮機能の向上

V.42bisからV.44への進化

v.92では、従来のV.42bisに代わり新たにV.44というデータ圧縮プロトコルが採用されました。

V.44は、圧縮率が20〜60%向上するため、同じ回線速度でもより多くのデータを効率的に送受信することが可能となりました。

これにより、通信品質が向上し、安定したデータ転送が実現されました。

クイックコネクト機能

接続確立時間の短縮効果

v.92にはクイックコネクト機能が搭載されており、従来の接続確立に比べて約半分の時間、すなわち10秒以内に接続が完了するよう改善されています。

この機能により、ユーザーは待ち時間なくインターネット接続を開始でき、ストレスの少ない通信環境が提供されました。

モデムオンホールド機能

同時利用による音声通話とデータ通信の共存

モデムオンホールド機能は、データ通信中に電話がかかってきた際に、通信を一時保留しながら通話を行うことを可能にしました。

以下の点が主な特徴です:

  • 音声通話とデータ通信を同一本の電話回線で利用可能
  • 通話終了後、迅速にデータ通信へ復帰可能
  • 専用回線を必要としないため、コスト削減に寄与

技術仕様と動作原理

基本的な技術仕様

v.92規格は、国際電気通信連合(ITU-T)によって策定された規格であり、以下のような仕様が含まれます:

  • 下り最大56kbps、上り最大48kbpsの通信速度
  • 全二重通信が可能な仕様
  • V.44による高度なデータ圧縮機能
  • クイックコネクト機能による迅速な接続手順
  • モデムオンホールド機能を活用した同時通話とデータ通信

通信プロセスの流れ

v.92の通信プロセスは、従来のモデム接続におけるハンドシェイクの段階を短縮しつつ、以下の流れで進行する仕組みとなっています:

  • 初期ハンドシェイクにより、接続可能な状態を確認
  • V.44圧縮技術によるデータ圧縮が開始される
  • クイックコネクト機能により、迅速に通信路が確立される
  • 通信中にモデムオンホールド機能が必要に応じて機能し、柔軟な通信が実現される

市場の反応と普及状況

ISP対応とモデム互換性の課題

v.92規格が普及するためには、モデムだけでなく、インターネットサービスプロバイダ(ISP)側も対応する必要がありました。

初期段階では、対応するモデムやサービスが少なかったため、普及に時間がかかった面があります。

ユーザーは、新たな規格に対応したハードウェアを導入する必要があり、互換性に関して幾つかの課題が生じた点が特徴です。

業界全体への影響とその後の展開

v.92規格は、従来のアナログモデム通信に新たな可能性をもたらす技術として業界に影響を与えました。

通信速度や接続の快適さが向上したことで、市場への期待が高まりました。

しかしながら、次第にブロードバンド回線やADSL、光ファイバーといった次世代通信技術の登場により、v.92の役割は移行期の技術として位置付けられるようになりました。

これにより、技術革新の歴史の中で、一つの転換点として評価される結果となりました。

まとめ

v.92は、アナログ電話回線を活用した高速モデム通信規格として、下り速度の維持と上り速度の向上、さらには高度なデータ圧縮技術や迅速な接続確立、音声通話との共存など、多くの改良点を備えた画期的な技術です。

これらの機能向上は、当時のインターネット環境に大きな変革をもたらし、通信技術の進化において重要な役割を果たしました。

現在の高速通信の発展に至るまでの過程を理解する上で、v.92規格は一つの歴史的なマイルストーンとして位置付けられています。

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