USARTとは?組み込みシステムで使う柔軟なシリアル通信方式
USARTは、組み込みシステムやマイコンの開発において広く利用されるシリアル通信インターフェースです。
Universal Synchronous Asynchronous Receiver Transmitterの略で、同期通信と非同期通信の両方に対応しているため、用途に応じた柔軟なデータ送受信が可能になります。
同期通信ではデータとともにクロック信号を利用し、正確なタイミングでデータをやり取りできるのに対して、非同期通信ではスタートビットとストップビットを使用してデータの始まりと終わりを示すことで、シンプルな接続が実現されます。
多くのシステムでは、コストや設計の都合に合わせてこれらのモードが選択され、効率的な通信が行われています。
USARTの基本
USARTの定義と特徴
USARTは「Universal Synchronous Asynchronous Receiver Transmitter」の略であり、同期式と非同期式の両方のシリアル通信に対応するインターフェースです。
この機能により、システムは通信状況や用途に合わせて、柔軟にデータの送受信方法を切り替えることが可能です。
従来のUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)とは異なり、USARTは同期通信モードもサポートするため、クロック信号を利用してより正確な通信が実現できます。
基本動作の概要
- 同期通信では、送信側と受信側が共通のクロック信号を参照してデータを送受信する仕組みです。
- 非同期通信では、データの送受信にクロック信号を使用せず、各データフレームの冒頭と末尾にスタートビットとストップビットを加えることで、データの開始と終了を判断します。
- これにより、接続機器の構成や通信速度に応じた柔軟な通信方式が選択できる仕組みとなっています。
同期通信と非同期通信の違い
USARTは、用途に応じて同期通信と非同期通信のどちらも利用可能です。
この二つの通信方式は、データ送受信時のタイミング管理方法や信号の伝達方法に大きな違いがあります。
各モードのメリットと適用例
- 同期通信のメリット
- 同期通信は、共通のクロック信号によりデータのタイミングが正確に管理されるため、データ転送の安定性が高いです。
- 高速通信が求められる場合や、タイミングが厳格に管理されたシステムに適しています。
- 非同期通信のメリット
- 非同期通信は、クロック信号が不要なため、配線や回路の設計がシンプルになり、実装コストが低く抑えられます。
- 一般的なシリアル通信や低速のデータ転送に適しており、シリアルポート通信など身近な環境で広く使われています。
同期通信の詳細
同期通信の動作原理
同期通信では、データとともにクロック信号が伝送されることで、送信側と受信側のタイミングが一致します。
この方式は、クリティカルなタイミング管理を必要とする環境において、有効な通信手段となります。
クロック信号の役割
- クロック信号は、データの送信と受信のタイミングを示す基準信号として機能します。
- 送信側は、データをクロックの立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングに合わせて送信します。
- 受信側は、このクロック信号をもとに、正確にデータをサンプルして受信します。
タイミング管理の仕組み
- タイミング管理は、データの正確な送受信を保証するために非常に重要です。
- 同期通信では、クロック信号によってデータ転送のリズムが決定され、これにより誤りの少ない通信が実現されます。
- システム構成要素間で正確なクロック同期が取れる場合、ビット誤り率が低減され、全体のパフォーマンス向上につながります。
非同期通信の詳細
非同期通信の基本構造
非同期通信では、クロック信号の伝送が行われないため、データフレームにスタートビットとストップビットが追加されます。
これにより、受信側がデータの開始と終了を正しく認識できる仕組みとなっています。
スタートビットとストップビットの役割
- スタートビット
- データの送信が開始されることを示すために、必ず「0」で始まります。
- 受信側は、スタートビットの検出をもってデータの受信準備を整えます。
- ストップビット
- データの送信が終了したことを示すため、通常は「1」で終わります。
- これにより、受信側が一つのデータフレームの完了を認識でき、次のデータの準備を行います。
データフレームの構成
- データビット
- 送信すべき実データが格納されているビット群です。
- パリティビット(オプション)
- 整合性チェックのために利用され、データの誤り検出をサポートします。
- エラーチェックの組み合わせ
- スタートビット、データビット、パリティビット、ストップビットの組み合わせにより、一つのデータフレームが構成されます。
非同期通信の動作原理
非同期通信は、スタートビットとストップビットによって、データの区切りを明示する方式です。
- 送信側は、各データフレームの始まりにスタートビットを挿入し、終わりにストップビットを加えることで、通信の正確性を高めています。
- 受信側は、ビット単位でデータのサンプルを行い、スタートビットの検出をもってフレームの開始を認識し、ストップビットの到来によってフレームの終了を確認します。
- この方法は、シンプルな設計でありながらも、一定の誤り耐性を持つ通信方式となっています。
組み込みシステムでのUSART活用事例
マイコン間通信での利用事例
組み込みシステムにおいて、USARTはマイコン同士の通信に広く利用されます。
- マイコン間でデータの交換を行う際、USARTを使用することで、機器間の正確なデータ伝送が可能になります。
- 制御装置やセンサーネットワーク内で、複数のマイコンが連携して動作する場合にも、USARTの柔軟な通信方式が役に立ちます。
センサーやディスプレイとの連携
- センサーとの通信
- センサーから取得したデータを、USARTを利用してリアルタイムに送信することで、システム全体で正確な情報管理が行えます。
- ディスプレイやその他出力機器との連携
- ディスプレイへのデータ送信や、他の周辺機器との連携にUSARTが用いられるケースが多く、これによりシステムの拡張性が向上します。
USARTの設定と構成
ボーレートの設定と調整
USARTの通信速度は、ボーレート(ビットレート)として指定されます。
- ボーレートは、送信するデータのビット数を単位時間で表した指標です。
- システム全体で適切なボーレートを選択することで、通信エラーを減少させ、スムーズなデータ転送が可能になります。
- 各機器が同一のボーレートに設定されることで、統一した通信速度と安定性が実現されます。
データフレームとエラーチェック機能の設定
- データフレームの構成
- 送信データのビット数、パリティ設定、ストップビットの数を調整することで、通信の信頼性を高められます。
- エラーチェック機能
- フレーム内のパリティビットやCRC(循環冗長検査)を利用することで、通信エラーの検出と補正が可能となります。
- これらの設定は、システムの用途に応じて最適な通信環境を構築するために欠かせない要素です。
まとめ
USARTは、同期通信と非同期通信の両方に対応する柔軟なシリアル通信方式として、組み込みシステムでのデータ通信において非常に有用な技術です。
それぞれの通信方式の特徴を理解し、用途に応じた適切な設定を行うことで、信頼性の高いデータ転送が可能となります。
今回紹介した内容を活用することで、システム設計やデバイス間連携の際に、USARTの強みを最大限に引き出すことができるでしょう。