マルチモード光ファイバーケーブルとは?短距離通信向け低コストの秘密
マルチモード光ファイバーケーブルは、複数の光経路で信号を伝送するケーブルです。
コアの直径は62.5μmや50μmと比較的大きく、主に短距離や建物内ネットワークに適しています。
低コストで設置しやすい一方、長距離伝送時にはモーダル分散により信号がぼやけることがあります。
用途に応じたOM1〜OM5などの規格があり、目的に合った選択が重要です。
基本原理
定義と特徴
マルチモード光ファイバーケーブルは、光の伝播経路が複数あることから、光信号がさまざまなルートを通って伝わる仕組みになっています。
ケーブル内部のコアが比較的大きいため、短距離の通信や建物内のネットワークに適した選択肢になります。
小規模な構成でも安定した通信が可能な点が魅力です。
コアのサイズと役割
直径規格(62.5μm、50μmなど)
マルチモード光ファイバーでは、コアの直径として62.5μmや50μmがよく採用されます。
- 62.5μmコアは広い範囲で安定した伝送を提供
- 50μmコアは高速通信や近距離伝送のニーズに合わせた性能を発揮
これらの規格は用途や必要な速度に応じて使い分けられ、設計段階から選定される項目となります。
複数モード伝送の仕組み
光信号がコア内を複数経路で移動するため、多少の経路の差異が影響を及ぼすことがあります。
これにより、伝送時に信号が複数のモードで伝わり、短距離での利用なら十分な性能が発揮されます。
結果として、建物内や限定された通信環境での利用に向いています。
伝送技術と性能
複数モード伝送の原理
複数モードの光ファイバーは、一度に複数の光路を活用することで信号を伝送します。
- 光はそれぞれ異なる経路を通るため、伝送経路の長さにばらつきが生じる
- この差が信号の伝達特性に影響を及ぼす可能性がある
この仕組みにより、構造上のシンプルさと低コストが実現され、短距離通信に強みが発揮されます。
モーダル分散の影響
光が各モードで伝搬する際、経路の違いから到達時間にずれが生じます。
- このずれは、信号が受信側で重なり合うことでぼやけやエラーの原因となる
- 一方で、短距離通信や速度要求がそれほど高くない環境では、影響は最小限に抑えられる
設計上、モーダル分散を考慮した規格選定が重要となります。
各種規格の特徴
OM1〜OM5の違い
マルチモード光ファイバーは、OM1からOM5までいくつかの分類があります。
- OM1、OM2は旧来の規格で、主にLED光源と組み合わせた通信に適用
- OM3、OM4、OM5はVCSELレーザーを光源とする設計で、高速かつ高帯域幅の伝送を実現
各規格は伝送距離、帯域幅、設計コストなどの要素が異なるため、用途に合わせた選択が求められます。
高速伝送に適したOM3〜OM4
OM3とOM4は、特に高速通信分野のニーズに応えるために最適化されています。
- OM3は最大伝送距離と速度のバランスが良く、多くのネットワーク環境に導入されている
- OM4は、更に高い帯域幅と長い伝送距離を実現するため、大容量のデータ伝送に適している
これらの規格は、未来のネットワークに向けた投資として注目されます。
応用事例と利用シーン
短距離通信での利用
マルチモード光ファイバーは光が複数の経路を通って伝わる特性を活かし、短い距離での通信に適しています。
- データセンター内のサーバー間接続
- 企業内ネットワークの内部配線
上記のような環境で、レスポンスの良さと接続の安定性が感じられます。
建物内ネットワークへの導入
建物内での導入においては、設置の容易さと低コストが大きなメリットとなります。
設置の容易性
マルチモード光ファイバーはコアが大きく、光信号の伝送が許容される範囲が広いため、配線作業が簡単になります。
- ケーブルの曲げやすさが向上
- 短距離での通信環境で安定した性能を確保
このため、オフィスや学校、商業施設など多様な環境で利用できます。
低コストのメリット
製造コストが低い点も大きな利点。
- 初期投資を抑えながら、高速通信を実現
- 拡張時のコスト負担も軽減する
建物全体のネットワーク環境において、経済的な選択肢となります。
シングルモード光ファイバーとの比較
伝送距離と速度の違い
シングルモード光ファイバーは、コアが非常に細いため単一経路で伝送する仕組みになっています。
- 長距離かつ高速度の伝送が可能
- モーダル分散の影響がほぼなく、よりクリアな伝送が期待できる
一方、マルチモード光ファイバーは、短距離における通信で安定した性能を発揮します。
コストと設置環境の比較
シングルモード光ファイバーは製造コストが高く、設置においても慎重な配慮が必要でしょう。
- 高価な通信インフラや広域ネットワーク向けにつかわれる
- 曲げに弱く設置場所も限定される傾向がある
これに対して、マルチモード光ファイバーは低コストで取り扱いやすく、限定された距離内であれば十分な性能を提供します。
まとめ
マルチモード光ファイバーケーブルは、光が複数経路で伝わる仕組みのおかげで、短距離通信や建物内ネットワークに適した選択肢となります。
- コアの直径は一般的に62.5μmまたは50μmが使用され、用途に合わせた規格選定がなされる
- OM3やOM4のような最新規格は、特に高速通信分野で安心して利用できる性能を発揮している
- シングルモード光ファイバーとの比較では、設置の容易さや経済性が魅力となる
今回の内容が、光通信技術の選択肢やその特徴に関する理解を深める助けになれば幸いです。