ファンクションポイント法とは?システム機能評価を活用した開発工数見積もりの基本
ファンクションポイント法は、システムが提供する機能を、データ入力、出力、照会、内部論理ファイル、外部インターフェースファイルの5項目に分け、各項目の複雑さを数値化する方法です。
この数値を基にして、ソフトウェア全体の規模や開発工数、コストを見積もることができ、プログラム行数に依存しないため合理的な評価が可能です。
基本
ファンクションポイント法の定義
ファンクションポイント法は、ソフトウェアが提供する機能に着目して評価する手法です。
システムがどのような役割を果たすかに基づき、工数やコストの見積もりに活用されます。
コード行数などには依存せず、ユーザーが利用する画面や処理の数・複雑さからポイントが付けられる仕組みです。
評価の目的と利用背景
この手法は、開発初期段階でシステム規模を把握し、予算やスケジュールの調整に役立ちます。
関係者全体に分かりやすい数値情報を提供できるため、プロジェクトマネジメントや外部ベンダーとのやり取りにも利用されます。
評価対象の要素
データ入力(External Inputs)の評価
ユーザーや外部システムからシステムに投入されるデータに対して評価を行います。
たとえば、以下の場合に点数が付けられます。
- 入力項目が多いフォーム入力
- ファイルアップロードなどの大量データ導入
評価する際は、データの項目数や入力画面の複雑さ、エラーチェックの必要性などが考慮されます。
データ出力(External Outputs)の評価
システムがユーザーや他のシステムに提供する情報の出力に焦点を当てます。
出力結果が単純なレポートだけでなく、複雑な計算結果やグラフの生成などを含む場合、評価のポイントが変動します。
出力形式や表示方法、利用されるデータの構造も考慮の対象となります。
照会(External Inquiries)の評価
ユーザーからの問い合わせや検索リクエストに対する処理が評価対象です。
単純なデータ照会から、条件指定による複雑な検索まで、要求内容に合わせて点数が調整されます。
リアルタイムな応答性能や、問い合わせ結果の整合性が評価のポイントとなるケースがあります。
内部論理ファイル(Internal Logical Files)の評価
システム内部で管理されるデータ群に対して評価します。
たとえば、顧客情報や製品データなど、システム固有の情報の保存方法や構造が評価基準となります。
データ間の関連性や更新頻度、保守管理の難しさなどが反映されることが一般的です。
外部インターフェースファイル(External Interface Files)の評価
他のシステムやアプリケーションと連携するために利用されるデータファイルを評価します。
連携相手との仕様調整や受け渡し方式、データ形式の整合性などが評価に影響します。
評価することで、システム間の連携部分の複雑さや信頼性が明確になります。
計算プロセス
複雑さの評価基準
各機能ごとに、処理の複雑さやデータ項目の数、内部ファイルとの関係などを基に評価を行います。
複雑さに応じた倍率が設定され、以下のような基準で判断されることがあります。
- 単純な機能:低い倍率を適用
- 中程度の機能:標準の倍率を適用
- 複雑な機能:高い倍率を適用
各機能の性質に合った倍率を選定することで、全体のファンクションポイントが適切に算出されます。
ファンクションポイントの算出方法
評価対象ごとに割り当てた点数に、各機能の複雑さに合わせた倍率を乗じる方式を採用します。
計算方法は一般的に以下の手順で進めます。
- 各機能に対して基本点数を算出
- 複雑さに応じた倍率を決定
- 基本点数と倍率を掛け合わせた値の合計を算出
- システム全体のファンクションポイントを導出
このプロセスにより、システムの規模や工数が数値的に把握しやすくなります。
算出結果の活用と注意点
算出されたファンクションポイントは、工数や開発コストの見積もりに活用されます。
ただし、評価基準に対して主観が含まれる部分があるため、以下の点に注意が必要です。
- 複数の評価者によるクロスチェックを実施
- 過去の実績データと照らし合わせた調整
- プロジェクトごとの特殊な要件を反映するための柔軟な対応
これらの注意点を踏まえながら利用することで、より信頼性の高い結果を得ることができます。
メリットと課題
工数見積もりへの応用例
ファンクションポイント法を用いることで、システム開発の初期段階でおおよその工数を算出できます。
たとえば、以下のような場面で有用です。
- 新規システム導入時の概算工数算出
- 既存システムの改修や機能追加時の見積もり
- 外部ベンダーとの契約内容確認や交渉時の参考数値
これにより、プロジェクト全体の予算やスケジュールの調整がしやすくなります。
技術に依存しない評価手法のメリット
技術環境や使用するプログラミング言語に左右されず、評価基準が利用できる点が大きな魅力です。
ユーザー視点で機能を数値化するため、システム間の比較や改善策の検討に役立ちます。
また、技術的な詳細よりも業務プロセスやユーザーの操作を重視するため、各関係者が理解しやすいというメリットがあります。
評価の主観性と精度向上への課題
各機能の評価時に、評価者の経験や判断が反映されるため、点数のばらつきが懸念されます。
この課題に対しては、以下のような対策が考えられます。
- 複数の評価者による意見交換
- 定量的な指標やチェックリストの活用
- 評価基準の定期見直しと標準化の推進
これらの取り組みにより、評価の主観性を抑え、より精度の高い見積もり結果を目指すことが期待されます。
まとめ
ファンクションポイント法は、システムの機能面に注目した柔軟な評価手法です。
各機能ごとに細かく点数が付けられるため、工数やコストの見積もりが分かりやすくなります。
評価基準の見直しや複数の評価者によるチェックを取り入れることで、信頼性の向上が期待できる仕組みになっています。
プロジェクトの計画段階で活用することで、より現実的なスケジュールや予算の策定に貢献できる取り組みのひとつと言えます。