FHRPとは?フェイルオーバーとロードバランシングのためのプロトコル(HSRP, VRRP, GLBP)
FHRP(First Hop Redundancy Protocol)は、ネットワークのデフォルトゲートウェイに冗長性を提供し、フェイルオーバーやロードバランシングを実現するプロトコル群です。
主なプロトコルには、CiscoのHSRP(Hot Standby Router Protocol)、オープンスタンダードのVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)、およびCisco独自のGLBP(Gateway Load Balancing Protocol)があります。
これらにより、ルーター障害時も通信を継続でき、トラフィックの分散も可能になります。
FHRPの概要
FHRP(First Hop Redundancy Protocol)は、ネットワークにおけるデフォルトゲートウェイの冗長化を実現するためのプロトコル群の総称です。
主に、ルーターやレイヤ3スイッチが単一障害点(SPOF)となることを防ぎ、ネットワークの可用性と信頼性を向上させる目的で使用されます。
FHRPを導入することで、デフォルトゲートウェイが故障した場合でも、迅速にバックアップデバイスに切り替わり、ネットワークの停止を最小限に抑えることが可能です。
主なFHRPプロトコル
- HSRP(Hot Standby Router Protocol): Ciscoが開発したプロトコルで、アクティブルーターとスタンバイルーターを設定して冗長化を実現します。
- VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol): IETF標準のプロトコルで、複数ベンダー間での互換性が特徴です。
- GLBP(Gateway Load Balancing Protocol): こちらもCiscoのプロトコルで、ロードバランシング機能が強化されています。
FHRPの利点
- 高可用性: ゲートウェイの故障時に自動的にバックアップに切り替わるため、ネットワークのダウンタイムを最小限に抑えられます。
- 負荷分散: 一部のプロトコルでは、複数のルーター間でトラフィックを分散させることが可能です。
- 簡単な設定: 一度設定すれば、冗長化が自動的に機能するため、管理が容易です。
HSRP(Hot Standby Router Protocol)
HSRPは、Cisco Systemsが開発したFHRPの一種で、デフォルトゲートウェイの冗長化を目的としています。
HSRPを使用することで、複数のルーターを一つのグループとして動作させ、一つがアクティブに動作し、他はスタンバイとして待機する構成が可能です。
動作原理
HSRPでは、グループ内にプライマリ(アクティブ)ルーターとバックアップ(スタンバイ)ルーターを設定します。
アクティブルーターは仮想IPアドレスを所有し、ネットワーク上でデフォルトゲートウェイとして機能します。
スタンバイルーターは、アクティブルーターに障害が発生した際に、自動的にその役割を引き継ぎます。
HSRPの特徴
- 仮想IPアドレス: グループ内で一つの仮想IPアドレスを使用し、クライアントはこのIPをデフォルトゲートウェイとして設定します。
- 優先度の設定: 各ルーターに優先度を設定することで、アクティブルーターの選出を制御できます。
- タイマー設定: HSRPにはHelloタイマーやホールドタイマーがあり、これらを調整することでフェイルオーバーの速さを制御できます。
HSRPの利点と欠点
利点 | 欠点 |
---|---|
高い冗長性と可用性 | Cisco製品に依存するため、他ベンダーとの互換性が低い |
設定が比較的簡単 | 基本的な機能のみで、ロードバランシングが限定的 |
VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)
VRRPは、IETF(Internet Engineering Task Force)が標準化したFHRPで、異なるベンダー間でも互換性を持って使用できるプロトコルです。
VRRPは、複数のルーターを一つの仮想ルーターとして動作させ、デフォルトゲートウェイの冗長化を実現します。
動作原理
VRRPでは、グループ内でマスター(アクティブ)ルーターとバックアップルーターを設定します。
マスタールーターは仮想IPアドレスを所有し、トラフィックを処理します。
マスターに障害が発生した場合、自動的にバックアップルーターがマスターに昇格し、仮想IPアドレスを引き継ぎます。
VRRPの特徴
- 標準化されたプロトコル: さまざまなベンダー製品間での互換性があります。
- プライオリティベースの選出: ルーターごとにプライオリティを設定し、最も高い値を持つルーターがマスターとして選出されます。
- フェイルオーバーの迅速性: マスターからバックアップへの切り替えが迅速に行われます。
VRRPの利点と欠点
利点 | 欠点 |
---|---|
ベンダーに依存しない汎用性 | 高度なロードバランシング機能が不足 |
高い可用性と信頼性 | 設定が複雑になる場合がある |
マスター選出の柔軟性 | 負荷分散機能が限定的 |
GLBP(Gateway Load Balancing Protocol)
GLBPは、Ciscoが開発したFHRPで、ロードバランシング機能を強化したプロトコルです。
GLBPを使用することで、複数のルーターがデフォルトゲートウェイとして均等にトラフィックを処理し、ネットワーク全体のパフォーマンスを向上させることができます。
動作原理
GLBPでは、複数のルーターがグループとして動作し、それぞれに仮想MACアドレスが割り当てられます。
クライアントからのトラフィックは、仮想MACアドレスを通じて特定のルーターに分散されます。
GLBPは、ロードバランサーとして機能するアクティブルーターを選出し、各ルーターがトラフィックを分散処理します。
GLBPの特徴
- ロードバランシング: 複数のルーター間でトラフィックを均等に分散し、ネットワークの効率を向上させます。
- 仮想MACアドレスの利用: 各ルーターに異なる仮想MACアドレスを割り当て、クライアントのアクセスを分散させます。
- 自動負荷調整: ネットワークの状況に応じて、動的に負荷を調整します。
GLBPの利点と欠点
利点 | 欠点 |
---|---|
効果的なロードバランシング | Cisco専用プロトコルのため他ベンダーとの互換性が低い |
高い可用性とスケーラビリティ | 設定が複雑になりがち |
自動的な負荷調整機能 | 導入コストが高くなる場合がある |
まとめ
この記事では、FHRPおよび主要なプロトコルであるHSRP、VRRP、GLBPについて詳しく解説しました。
FHRPの活用により、ネットワークの可用性と信頼性が向上し、効果的なロードバランシングも実現できます。
これらのプロトコルを適切に導入することで、より安定したネットワーク環境を構築してください。