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確認書制度とは?企業内部統制強化と有価証券報告書の適正な記載を支える制度の仕組み

確認書制度は、企業の代表が有価証券報告書の記載内容の正確性や適正性を確認し、確認書として報告書とともに金融庁に提出する制度です。

確認書には、確認した範囲やその理由、また財務諸表作成システムの機能状況などについて記載し、企業内部統制の強化に寄与することが期待されています。

金融庁は、将来的な義務化も検討しています。

制度の意義と背景

制度導入の経緯

2004年から任意で導入され始めたこの制度は、有価証券報告書の記載内容の適正性を確認するために、会社の代表(経営者)が確認書を作成し、報告書と共に提出する仕組みです。

金融庁が定めた開示ガイドラインに沿い、企業は報告書の情報の正確性と透明性を確保するための自己チェックを行います。

これにより、投資家や市場参加者からの信頼を得る狙いがあり、企業の情報開示プロセスの信頼性強化につながっています。

内部統制強化への影響

この制度は、企業内部における管理体制の整備と強化を促進します。

代表者が確認書を作成することで、以下の効果が期待できます。

  • 経営層による情報の直接確認が習慣化し、内部統制意識が高まる
  • 各部署間で整合性のある情報共有が進み、リスク管理の一層の徹底が促される
  • 外部監査の際に確認書があることで、企業の透明性と信頼性が向上する

このように、制度は企業内部の統制やプロセス改善に寄与し、組織全体の健全な運営を支える要素となっています。

金融庁の検討状況

金融庁は、企業の内部統制強化や財務報告の信頼性向上を背景に、確認書制度の義務化を検討中です。

現状は任意制度として運用されておりますが、企業のコンプライアンス意識の高まりや市場環境の変化に伴い、以下の点が注目されています。

  • 業界全体の統一基準が整備されることで情報の信頼性が向上する可能性
  • 義務化により、企業間のルールの一貫性が確保され、投資家保護が強化される効果
  • システムや内部統制の改善を促し、不正の予防や早期発見につながる点

これらの検討事項は今後の制度改正や市場全体の透明性向上に向けた重要な課題として注目されています。

制度の仕組み

有価証券報告書との連携

確認書制度は、有価証券報告書と密接に連携して運用されます。

企業は報告書に記載する財務情報の正確性を確認するため、代表者自身が以下の点について検証した内容を確認書として作成します。

確認書は報告書提出時に一体として扱われ、投資家や金融機関に対して企業の情報開示が適正に行われていることを証明する役割を果たします。

確認書に記載すべき内容

確認書には、金融庁の開示ガイドラインに沿って、主に以下の4項目が記載されます。

記載内容の適正性確認

企業は、有価証券報告書に記載された情報が正確かつ適正に作成されているかを確認した事実を記載します。

これにより、報告書の内容に対する内部チェックが完了していることが証明され、外部からの信頼性が高まります。

確認範囲の限定とその理由

確認が行われた情報の範囲が限定されている場合には、その旨と限定理由を明示する必要があります。

例えば、特定の会計処理や業務領域に限定してチェックを実施した場合、その理由や背景について具体的に記載することで、読者に対して透明性を提供します。

内部システムの機能確認

財務諸表等が適正に作成されるために必要な内部システムが正常に機能していたか否かについても確認書に記載します。

システムが適切に管理され、運用されていることを明記することで、情報の正確性を裏付ける重要な根拠となります。

特記事項の明示

確認の過程で特に留意すべき事項や、例外的な状況が発生した場合には、その特記事項についても記載します。

これにより、確認の内容に潜むリスクや不確実要素が明確になり、報告書全体の信頼性が向上します。

運用の流れ

確認書制度の運用は、以下の流れで実施されます。

  • 企業は有価証券報告書の作成プロセスにおいて、確認が必要な情報を整理する
  • 代表者が中心となり、内部システムや運用状況をチェックし、各項目ごとに確認の結果をまとめる
  • 確認書を作成し、有価証券報告書と併せて金融庁に提出する
  • 外部監査や市場からの問い合わせに対応できるよう、確認プロセスの記録を保管する

これらを通じて、企業は情報開示の透明性と正確性を高いレベルで維持する仕組みを確立しています。

企業実務への影響

内部統制強化の効果

確認書制度の導入により、企業内部での情報管理と統制が強化されます。

具体的には、以下の効果が期待されます。

  • 経営層が直接確認作業に関与することで、情報管理の責任意識が向上する
  • 各部門間での連携が進み、不整合や誤りを早期に発見できる体制が整う
  • 内部統制プロセスの見直しが促され、業務フローの改善が進む

これにより、経営判断の質が向上し、企業全体のリスク管理がより徹底される効果が現れます。

財務報告の信頼性向上

確認書制度は、財務報告の信頼性を高めるための重要なツールとして機能します。

以下の点が特に評価されています。

  • 企業の報告内容に対する内部チェックが明文化されるため、投資家や取引先からの信頼が向上する
  • 誤りや不正の早期発見が可能になり、外部監査との連携が円滑になる
  • 確認プロセス自体が透明に運用されることで、企業のガバナンス強化につながる

このような運用により、企業の信用維持と市場の透明性確保に貢献する仕組みとなっています。

実務上の留意点

確認書制度導入にあたっては、以下の点に注意が必要です。

  • 内部システムの運用状況やチェック体制の整備が不可欠であり、専門部署の連携が求められる
  • 確認範囲や限定理由の記載について、曖昧さが生じないよう具体的な説明が必要である
  • 作成された確認書は、外部からの問い合わせに対して迅速に説明できる状態に整備しておくことが重要である
  • 定期的な内部監査や外部レビューを通じ、確認プロセスの継続的な改善を図ることが求められる

これらの留意点を踏まえることで、企業は確認書制度を効果的に運用し、内部統制の強化と報告の信頼性向上を図ることが可能となります。

制度展開と今後の課題

義務化検討の動向

金融庁は、確認書制度の有用性を踏まえ、義務化に向けた動向を慎重に検討しています。

現状は任意での運用となっておりますが、業界全体の透明性向上と内部統制の強化を目的として、今後以下の点が検討されています。

  • すべての上場企業に対して、一定の基準を満たす確認書作成を義務付ける可能性
  • 義務化に伴う運用コストや内部体制の負担を軽減するためのサポート体制の整備
  • 義務化に向けた段階的導入や、企業規模に応じた適用範囲の柔軟な設定

これにより、企業ごとにばらつきがあった内部統制プロセスの一律化が進み、市場全体の透明性と信頼性が強化されることが期待されます。

制度改正の可能性

今後、確認書制度に対しては制度改正の可能性も視野に入れ、以下の点が議論されています。

  • 報告書の作成プロセスや確認事項の内容を、最新の会計基準やIT技術に合わせて更新する必要性
  • 企業の運用実態に即した柔軟な運用ルールの整備
  • 内部統制の強化と透明性確保の観点から、確認プロセスに新たなチェック項目を追加する可能性

このような改正が進むことで、制度自体が時代の変化に適応し、企業の信頼性向上に一層寄与する仕組みへと進化すると考えられます。

市場全体への影響

確認書制度の普及は、企業内部の統制強化のみならず、市場全体にもさまざまな影響を及ぼします。

主な影響としては、以下が挙げられます。

  • 投資家や金融機関から見た企業の透明性が向上し、資金調達環境の改善につながる
  • 統一された内部統制基準が定着することで、業界全体でのリスク管理が高度化する
  • 財務報告の信頼性が強化されることで、株式市場や債券市場全体の健全な発展に寄与する

これらの影響は、市場参加者間の信頼醸成と、より健全な資本市場の形成につながると期待され、長期的な経済成長の基盤として重要な役割を果たすと考えられます。

まとめ

この記事では、有価証券報告書の適正な記載を支える確認書制度について、導入の経緯、内部統制強化への効果、金融庁の検討状況などの背景や仕組み、企業実務への影響、今後の制度展開と課題を解説しました。

経営陣による直接のチェックや内部システムの機能確認を通して、企業の情報開示の透明性と信頼性が向上する仕組みが理解できます。

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