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PVSTとは?Per VLAN Spanning Treeの概要とネットワーク設計への応用

PVST(Per VLAN Spanning Tree)は、各VLANごとに独立したスパニングツリーを構築するプロトコルです。

これにより、VLANごとに最適なパスが選択され、ネットワークの冗長性と負荷分散が向上します。

ネットワーク設計では、PVSTを利用することでVLAN単位でのトラフィック制御が可能となり、効率的な資源利用と障害時の迅速な回復が実現します。

また、各VLANに異なるスパニングツリー設定を適用できるため、柔軟なネットワーク管理が可能です。

PVSTの基本概要

PVST(Per VLAN Spanning Tree)は、Cisco Systemsによって開発されたスパニングツリーの拡張版であり、VLAN(Virtual Local Area Network)ごとに独立したスパニングツリートポロジーを構築するプロトコルです。

従来のSTP(Spanning Tree Protocol)はネットワーク全体で単一のスパニングツリーを使用して冗長パスを管理しますが、PVSTは各VLANごとに独立したスパニングツリーを維持することにより、ネットワークの柔軟性と効率性を向上させます。

主な特徴

  • VLANごとの独立管理: 各VLANに対して個別のブリッジIDを割り当て、独立したスパニングツリーを構築します。
  • 負荷分散の最適化: 異なるVLANで異なるポートをブロックすることで、ネットワーク全体の負荷分散を最適化します。
  • 高い柔軟性: ネットワークトポロジーの変更や拡張に対して柔軟に対応可能です。

PVSTの動作メカニズム

PVSTは、各VLANごとにルートブリッジを選出し、そのVLANに対して最適なスパニングツリーを構築します。

以下に、PVSTの基本的な動作メカニズムを詳しく説明します。

ルートブリッジの選出

  1. ブリッジIDの設定: 各スイッチはブリッジID(優先度とMACアドレスの組み合わせ)を持ちます。VLANごとに異なるブリッジIDが設定されます。
  2. ルートブリッジの決定: 各VLAN内で最も低いブリッジIDを持つスイッチがそのVLANのルートブリッジとして選出されます。

ポートの役割と状態

PVSTでは、各ポートが以下のいずれかの役割を持ちます。

  • ルートポート(Root Port): ルートブリッジから最も短いパスを持つポート。
  • 指定ポート(Designated Port): 各ネットワークセグメントでルートブリッジへの最短パスを提供するポート。
  • ブロックポート(Blocked Port): ループを防止するために、データ転送を行わないポート。

BPDUの交換

PVSTはBPDU(Bridge Protocol Data Unit)を使用してスイッチ間で情報を交換し、スパニングツリーのトポロジーを維持します。

各VLANごとにBPDUが送信され、ネットワークの状態を監視します。

PVSTと他のスパニングツリーの比較

PVSTは他のスパニングツリープロトコルと比較していくつかの利点と特徴を持っています。

以下に主要な比較ポイントを示します。

特徴STP(802.1D)PVSTRSTP(802.1w)MSTP(802.1s)
VLAN対応非対応各VLANごとに対応非対応グループごとに対応
ブリッジID一意VLANごとに異なる一意グループごとに異なる
冗長パス管理単一スパニングツリーVLANごとのスパニングツリー単一スパニングツリーグループごとのスパニングツリー
過渡時間長いSTPと同様短いSTPに依存
設定の複雑さ簡単複雑中程度複雑

主な比較点

  • VLAN対応: PVSTは各VLANごとにスパニングツリーを構築可能なのに対し、従来のSTPやRSTPは対応していません。MSTPはグループ単位で対応します。
  • 冗長パスの最適化: PVSTはVLANごとに異なる冗長パスを管理できるため、負荷分散が容易です。
  • 設定の複雑さ: PVSTは設定が複雑になる傾向がありますが、その分高い柔軟性を提供します。

ネットワーク設計への実装方法

PVSTをネットワーク設計に実装する際には、以下の手順と考慮事項を踏まえる必要があります。

設計ステップ

  1. VLANの定義: ネットワーク内の各VLANを定義し、必要なブリッジIDを設定します。
  2. ルートブリッジの選定: 各VLANごとにルートブリッジを選定し、適切なスイッチにブリッジIDを設定します。
  3. ポートの役割設定: 各スイッチのポートに対してルートポート、指定ポート、ブロックポートを適切に割り当てます。
  4. BPDUの管理: BPDUフィルタリングやBPDUガードを導入し、スパニングツリートポロジーの安全性を確保します。
  5. 負荷分散の最適化: VLANごとに異なるスパニングツリーを設定し、ネットワーク全体の負荷分散を最適化します。

実装の考慮事項

  • スケーラビリティ: VLANの数が増加すると、スパニングツリーの管理が複雑になるため、スケーラビリティを考慮した設計が必要です。
  • ネットワークの冗長性: PVSTを使用することで冗長性を高めることができますが、適切な冗長パスの設計が求められます。
  • パフォーマンスの最適化: BPDUの交換頻度やポートの状態遷移に注意し、ネットワークのパフォーマンスを維持します。
  • 互換性: 他のスパニングツリープロトコルとの互換性を確認し、必要に応じて設定を調整します。

実装例

以下は、PVSTを使用したシンプルなネットワークの実装例です。

  1. スイッチAをVLAN10のルートブリッジに設定。
  2. スイッチBをVLAN20のルートブリッジに設定。
  3. 各スイッチ間のリンクに対して、VLANごとにスパニングツリーを構成。
  4. 各スイッチのブロックポートをVLANごとに設定し、負荷分散を実現。

このように設計することで、各VLANごとに最適なスパニングツリーが構築され、ネットワークの効率性と冗長性が向上します。

まとめ

PVSTの概要や動作メカニズム、他のスパニングツリーとの比較、そしてネットワーク設計への具体的な実装方法について詳しく解説しました。

これにより、各VLANごとに最適なスパニングツリーを構築し、ネットワークの効率性と冗長性を向上させる手法が理解できたことでしょう。

ぜひ、実際のネットワーク環境にPVSTを導入し、安定した通信基盤の構築に役立ててください。

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