ストレージ

DLTとは?高速大容量テープバックアップを実現するテープドライブ技術

DLTはDECが開発したテープドライブで、非圧縮時に最大20GB、圧縮時に最大40GBのデータを記録できます。

読み書きは1.25MB/sec程度の高速転送が可能で、サーバーのバックアップストレージとしてよく利用されます。

さらに、SCSI-2のコマンドセットや内蔵診断、2MBのキャッシュ機能が備わっており、現在はQuantumの製品として提供されています。

DLTの開発背景と歴史

DECによる研究開発の経緯

DECは、当時急速に拡大していたサーバー市場において、大容量かつ高速なバックアップシステムの需要に応えるため、新たなテープドライブ技術の研究開発を進めました。

  • 当初は既存のヘリカルスキャン方式では十分な性能が得られなかったため、固定ヘッド方式と高速テープ移動の組み合わせを検討しました。
  • 一本のテープカートリッジに非圧縮時で約20Gbytes、圧縮時で約40Gbytesものデータを記録できる処理能力を実現するため、従来の技術を大幅に見直しました。

この背景には、サーバーシステムが搭載する大容量ハードディスクのデータ保護と高速バックアップの需要があり、DECはその市場ニーズに応えるため、DLT技術の開発に着手しました。

Quantumへの事業譲渡と影響

当初DECが開発したDLTは、その後、DECのストレージ部門がQuantumに譲渡されたことにより、Quantumの製品として市場に再登場しました。

  • この譲渡により、QuantumはDLTの開発技術を自社製品に統合し、さらなる改良と市場拡大を図りました。
  • 経営体制の変化とともに、バックアップシステムとしての信頼性および性能向上が進み、広範な企業や研究機関に採用される結果となりました。

DLTの技術的特徴

高速データ転送と大容量記録の仕組み

DLTは、高速なデータ転送と大容量のバックアップを同時に実現するための様々な工夫がなされております。

  • 固定ヘッド方式を採用することで、従来の読み書き方式よりも安定した性能を引き出しています。
  • 複数チャネルでの同時読み書きを可能にし、データ転送のボトルネックを解消しています。

テープカートリッジの容量仕様

DLTで使用されるテープカートリッジは、大容量のデータ記録に対応しています。

  • 非圧縮時には最大約20Gbytesの記録が可能であり、圧縮機能を活用する場合は約40Gbytesまでのデータ保存が実現されます。
  • 一つのカートリッジで大量のデータをバックアップできるため、企業のデータ保護戦略において重要な役割を果たしています。

転送速度向上の技術要因

DLTが高速なデータ転送を実現できる理由は、以下の技術的工夫にあります。

  • 固定ヘッド方式と組み合わせることでヘッド移動が不要となり、データの読み書き速度が向上しました。
  • 複数チャネルによる同時動作が、転送速度をさらに高速化し、膨大なデータの処理を可能にしています。
  • テープ移動時の機械的なブレを最小限に抑える設計が、高速転送を支える重要な要素となっています。

固定ヘッド方式の採用

DLTでは、データの高精度な読み書きのため、固定ヘッド方式が採用されています。

  • ヘッドの位置が固定されるため、常に同一の位置でデータを読み取ることができ、信頼性が向上します。

ヘリカルスキャン方式との比較

従来のヘリカルスキャン方式は、家庭用VTRやDATドライブで一般的に用いられている方式です。

  • ヘリカルスキャン方式はテープの斜め走行を利用してデータを記録しますが、機械的な負荷や読み書きの精度に課題がありました。
  • 一方、固定ヘッド方式は、ヘッドが動かないため、録音や再生時のブレが少なく、データ転送の安定性が確保されています。

高速テープ移動の実現法

DLTは、固定ヘッド方式を採用しながらも高速なデータ転送を実現するため、テープの移動メカニズムに工夫が凝らされています。

  • テープを一定の速度で正確に移動させるためのモーター制御技術が用いられており、振動や摩擦を低減させる設計が施されています。
  • 複数チャネルで一度にデータの読み書きを行えるため、テープ全体の利用効率が向上し、高速化に寄与しています。

DLTの信頼性と性能改善

SCSI-2規格との互換性

DLTは、SCSI-2のコマンドセットに完全に準拠しており、既存のサーバーシステムとの互換性が確保されています。

  • SCSIインターフェースを採用することで、システム統合が容易となり、柔軟なバックアップ環境の構築が可能です。
  • 標準規格に基づく動作により、データ転送の安定性や信頼性が高まっています。

内蔵診断機能による安全性

DLTには、内蔵診断機能が備えられており、運用中の不具合や異常を早期に検知することができます。

  • 診断機能は、ハードウェアの状態を常時監視し、異常が発生した際には即座に通知を行います。
  • 安全性の向上により、バックアップ作業中のデータ損失リスクが低減され、システム全体の信頼性が確保されています。

2MBキャッシュとデータ圧縮機能の役割

DLTには、約2MBのキャッシュメモリが内蔵されており、これが高速なデータ転送の一翼を担っています。

  • キャッシュメモリは、一時的なデータ保管に利用され、連続した読み書き処理の効率を向上させています。
  • さらに、内蔵のデータ圧縮機能と組み合わせることで、バックアップ容量を実質的に拡大し、短時間で大量のデータを保存することが可能となっています。

サーバーバックアップでのDLT活用事例

大容量ストレージ環境での導入例

DLTは、大容量ストレージ環境におけるサーバーバックアップとして高い実績を持っています。

  • 大規模企業のデータセンターでは、膨大なデータ量を効率的に保管するため、DLTが採用されています。
  • 金融機関や研究機関など、データの信頼性と高速な復旧が求められる環境での利用例が多数報告されています。
  • バックアップ運用の自動化と連携することで、システム全体の運用コスト削減にも貢献しています。

市場における位置付けと比較対象技術

DLTは、従来型のテープドライブや新世代のバックアップ技術と比較して、独自の技術的優位性を持っています。

  • 固定ヘッド方式と高速テープ移動の組み合わせにより、従来の技術と比べて効率的なデータ転送と大容量記録が実現されています。
  • 市場においては、SCSI-2規格との互換性や内蔵診断機能、高性能キャッシュの点で優れた性能を発揮し、信頼性重視のバックアップソリューションとして評価されています。
  • 他のバックアップ方式と比較すると、初期投資が必要な場合もあるものの、運用コストの低減や長期的な信頼性を考慮すると、十分な価値を提供していると言えます。

まとめ

本記事では、DECが開発したDLTの誕生背景、Quantumへの譲渡による影響、固定ヘッド方式と高速テープ移動による高速データ転送・大容量記録の実現、さらにSCSI-2規格準拠や内蔵診断、2MBキャッシュ・圧縮機能を通じた高い信頼性について解説しております。

大容量ストレージ環境での導入実績から、従来技術に対する優位性が理解できる内容です。

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