6x86MXとは? CyrixのSocket7互換プロセッサに見るMMX命令搭載と改良設計の実力解説
6x86MXは、Cyrix社が開発したSocket 7互換のプロセッサです。
基礎は6×86を踏襲しながら、MMX命令実行ユニットや拡張された1次キャッシュなどの改良が施されています。
内部クロックは133MHzから188MHzで、性能はPentium Processor with MMX TechnologyやPentium IIと同等とされています。
また、デュアルボルテージ設計により、コア電圧とI/O電圧が別々に管理されている点も特徴です。
開発背景と市場環境
Cyrixは、Pentium Processor with MMX TechnologyやPentium IIに対抗するため、既存のSocket 7互換プラットフォームを採用した製品開発に着手しました。
市場では、既存のマザーボードへの互換性やコストパフォーマンスが重視される一方で、性能向上に対する要求が高まっていたため、Socket 7互換性と最新技術の融合が求められました。
Socket 7互換性の意義と市場要求
- Socket 7プラットフォームは、多くのユーザーやシステムで既に採用されているため、互換性が高いメリットがあります。
- マザーボードの交換を最小限に抑えることで、既存システムのアップグレードが容易になります。
- 市場側からは、互換性と同時にPentiumシリーズと同等あるいは向上した性能への期待がありました。
- Cyrixは、こうした市場要求に応えるため、ハードウェア設計においてSocket 7互換性を維持しながら、独自の改良を盛り込む方針を採用しました。
6x86MX開発の目的と経緯
- 当初の6×86シリーズの成功を基盤に、さらなる性能向上と多機能化が求められました。
- M2の開発コード名で知られる6x86MXは、Pentium Processor with MMX Technology-166MHz/200MHz、Pentium II-233MHzと同等の性能を目指して設計されました。
- エンジニアリングチームは、既存のアーキテクチャを発展させる形で、MMX命令実行ユニットの搭載やキャッシュ機能の拡充など、大幅な改良を重ねることを決定しました。
アーキテクチャの基盤と改良点
6x86MXは、従来の6×86アーキテクチャを基盤にしながら、現代の要求に応えるための改良が加えられたプロセッサです。
基本設計の継承と同時に、性能向上のための様々な工夫が盛り込まれています。
6×86アーキテクチャの継承と課題
- 元々の6×86アーキテクチャは、多くのシステムで採用され、信頼性を確保していました。
- しかし、時代の進歩に伴う新たな要求を満たすため、性能や処理能力の面で課題が浮上していました。
- 新しい設計では、既存の互換性を保ちながらも、パフォーマンス向上と電力効率の改善が求められました。
MMX命令実行ユニットの実装
Cyrixは、IntelのMMXテクノロジーに対抗すべく、独自の方法でMMX命令実行ユニットを実装しました。
これにより、演算処理の高速化やマルチメディア処理性能の向上を実現しています。
MMX命令の解析と搭載ポイント
- Cyrixは、MMX命令の内部構造を詳細に解析し、実装可能な形に落とし込みました。
- 搭載ポイントとしては、命令のデコードから実行部に至るまで、適切なタイミングでMMX命令を処理するための専用ユニットが組み込まれています。
- この解析と実装の手法により、Intel製プロセッサと互換性を保ちながら、独自の性能向上を図ることができました。
キャッシュおよびTLB/BTB構成の改良
従来の設計では、プロセッサ内部のデータアクセス速度に課題が存在していました。
6x86MXでは、キャッシュやTLB、BTBの構成を見直すことで、アクセスの高速化と効率向上を実現しています。
1次キャッシュの64Kbytes拡張の効果
- 1次キャッシュが従来のサイズから4倍の64Kbytesに拡張されたことで、データのヒット率が向上しました。
- 拡張されたキャッシュにより、CPUが必要とするデータをより迅速に取得でき、全体的な処理速度が向上します。
- 加えて、TLBとBTBの構成変更により、アドレス変換や分岐予測の精度が改善され、パフォーマンスの安定性に寄与しています。
製品仕様と技術的特徴
6x86MXの製品仕様は、性能だけでなく設計面でも細部にわたる改良が施されています。
内部クロック設定や電圧供給方式など、各要素が総合的に製品の優位性を支えています。
内部クロック設定と倍率の詳細
内部クロックの設定はプロセッサ動作の基礎となる重要なパラメータです。
6x86MXでは、133MHz~188MHzの内部クロックが採用され、外部クロックとの乗算倍率を活用する構造が特徴です。
2倍と2.5倍のクロック倍率の意味
- 2倍の倍率は、ベースとなる内部クロックに対し、比較的安定した動作と低消費電力を実現する設計です。
- 2.5倍の倍率は、より高い動作周波数を実現するために採用されており、性能向上を狙った用途に適しています。
- この設計により、システム構成や目的に応じて最適な動作モードを選択できる柔軟性を持ちます。
デュアルボルテージ構造の設計
6x86MXは、処理性能と電力管理の両面から製品の安定動作を支えるため、デュアルボルテージ構造を採用しました。
これにより、異なる回路部への最適な電圧供給が可能となっています。
コア電圧とI/O電圧仕様の特徴
- コア電圧は、初期バージョンが2.8Vから後のモデルでは2.9Vに設定され、プロセッサ内部の高速動作と安定性を実現しています。
- I/O電圧は3.3Vが採用され、外部とのインターフェースの互換性や信号伝送の信頼性を確保しています。
- このデュアルボルテージ設計により、CPU内部の性能向上とシステム全体の調和が図られています。
競合製品との性能比較
6x86MXは、同じSocket 7互換プロセッサ市場において、Pentium Processor with MMX TechnologyやPentium IIと肩を並べる性能を持つよう設計されました。
各製品との互換性や性能面での比較は、消費者にとって大きな選択基準となります。
Pentium Processor with MMX Technologyとの互換性
- 6x86MXは、ピン配置がPentium Processor with MMX Technologyと同一であるため、既存のシステムに容易に導入できます。
- 命令体系もx86互換であり、ソフトウェア面での互換性にも優れた設計となっています。
- MMX命令の搭載により、Intel製プロセッサと対抗できる性能を持つ一方で、独自の設計改善が施されている点が強みとなります。
Pentium II対抗性能の評価と市場での位置付け
- 製品ラインアップでは、Pentium II-233MHzと同等の性能が発揮できるモデルも提供され、競合市場で高い評価を受けました。
- 内部クロック設定、キャッシュ拡張、TLB/BTBの最適化など、細部にわたる改良が総合的な性能向上に寄与しています。
- 競合製品に匹敵するあるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮するという評価により、コスト面や互換性においても魅力的な選択肢となっています。
まとめ
6x86MXは、既存のSocket7互換性を活かしながら、MMX命令実行ユニットの搭載、1次キャッシュの64Kbytes拡張、TLB/BTBの改良などで性能向上を実現するプロセッサです。
内部クロック設定やデュアルボルテージ設計にもより、Pentium Processor with MMX TechnologyやPentium IIに匹敵する性能と互換性を備えている点が理解できる内容となっています。Cyrixが開発したPentiumProcessor with MMX Technology/Pentium Ⅱ対抗のSocket 7互換プロセッサー。M2の開発コード名で呼ばれていた。ラインアップとしては、Pentium Processor with MMX Technology-166MHz/200MHz、Pentium Ⅱ-233MHzと同等の性能を発揮するとされる3製品が提供されている。内部クロックは133MHz~188MHzで、内外クロック倍率は2倍または2.5倍である。6x86MXは、基本的に6×86をベースにさまざまな改良が施されている。具体的には、Pentium Processor with MMX Technology互換のMMX命令実行ユニットを内蔵し、1次キャッシュを4倍の64Kbytesに増量、TLBやBTBの構成を変更する、などといった大幅な改良が行なわれた。命令体系はx86 CPUと互換で、ピン配置はPentium Processor with MMX Technologyと互換性がある。MMX機能は、Cyrixが独自に解析して実装したものである。6x86MXはデュアルボルテージ構造を採用しており、コア電源は2.9V(初期バージョンは2.8V)でI/O電源は3.3Vである。