10BASE5とは?同軸ケーブルを用いた10Mbpsイーサネットの原点
10BASE5は、IEEE802.3で標準化された10MbpsのEthernet規格です。
同軸ケーブル(直径約1センチ、50Ω規格)を用い、バス型配線で機器を接続します。
ケーブルに直接穴をあけタップを設置し、トランシーバを介して各ホストと連携します。
最大延長は500メートルで、両端にターミネータを取り付けます。
10BASE5の物理層設計
10BASE5は、初期のEthernet規格として、同軸ケーブルを用いた10Mbpsのデータ伝送方式を採用しています。
物理層設計においては、ケーブル自体の仕様とバス型配線の構造が重要な役割を果たします。
同軸ケーブルの基本仕様
同軸ケーブルは10BASE5の伝送路として採用され、信号の損失や外部ノイズの影響を抑える設計がなされています。
ケーブルの直径とインピーダンスの特徴
- ケーブルは直径約1センチメートルで、見た目からも太さが特徴的です。
- インピーダンスは50Ωに統一されており、この値により信号の反射や減衰が最小限に抑えられる設計となっています。
- 同軸ケーブルは「イエローケーブル」とも呼ばれ、物理的な安定性を提供します。
物理信号の伝送方式
- 信号はベースバンド伝送方式によりアナログ信号としてケーブル内を伝送します。
- 伝送にあたっては、適切な信号レベルと波形が維持されるように設計され、回線全体での一貫性が確保されています。
- ケーブル内部での信号減衰や外部の電磁干渉に対する対策もなされているため、安定したデータ通信が実現されています。
バス型配線の仕組み
バス型の配線方式は、一本の同軸ケーブルに複数の接続ポイントを設ける方式です。
この構造により、ネットワーク機器間の接続がシンプルに実現されます。
タップの設置方法と役割
- 同軸ケーブルに直接穴を開け、タップを取り付ける方式が採用されています。
- タップは、ケーブル中の特定の位置から信号を拾い上げる役割を担い、各ホストとの接続点として機能します。
- 正確な位置に設置することで、信号の均一な分配が行われ、ネットワーク全体の通信品質が維持されます。
トランシーバの接続方法
- タップに接続された部分には、トランシーバ(送受信機)が取り付けられます。
- トランシーバは、同軸ケーブル内のアナログ信号をデジタル信号に変換する役割を持ち、各ホストとのインターフェースとして機能します。
- トランシーバとホストの間は専用のケーブル(トランシーバケーブル)を介して結ばれ、信号の正確な送受信が行われるよう設計されています。
技術的仕様と通信性能
10BASE5の技術的仕様は、通信速度や伝送距離などの性能面でも特徴的な設計がなされており、初期のLAN環境において大きな役割を果たしました。
10Mbps伝送速度の意義
- IEEE802.3として最初に標準化された10Mbps Ethernetは、当時のネットワーク技術に革新をもたらしました。
- 10Mbpsという伝送速度は、初期のコンピュータネットワークに適した速度として採用され、信頼性と安定性を重視した設計がなされています。
- この速度は、今日の基準からすると低速に感じられるものの、時代背景においては十分な通信性能を発揮していました。
ケーブルの最大延長距離と制限要因
同軸ケーブルの特性により、10BASE5では1本のケーブルあたりの最大延長距離が定められています。
延長距離に影響する物理特性
- ケーブルの内部抵抗や信号減衰の影響により、最大延長距離は500メートルに制限されています。
- ケーブルの品質や設置環境(温度、湿度、外部ノイズなど)によっても伝送可能な距離に影響が出るため、適切な管理が求められます。
- 長距離伝送時には、信号の強度や波形が維持されるよう、電気的な特性が詳細に設計されています。
ターミネータの機能と配置
- ケーブルの両端にはターミネータが配置され、信号が反射するのを防ぐ役割を果たします。
- ターミネータは、決められた抵抗値によってケーブルの終端で正しい終端処理を行い、信号の乱反射を防止します。
- 適切なターミネータ配置により、通信エラーが防がれ、安定したデータ伝送が維持されます。
開発背景と業界への影響
10BASE5は、Ethernet技術の発展において転換点となる存在であり、その開発背景と業界への波及効果は非常に大きなものでした。
IEEE802.3との関連性
- 10BASE5は、IEEE802.3の中で初めて標準化された10Mbps Ethernet規格です。
- IEEEによる標準化プロセスを通じて、広範な相互接続性と互換性が確保され、各社の機器が同一ネットワーク上で動作する基盤を提供しました。
- 規格の標準化は、ネットワーク市場の拡大と技術革新を促進する重要な要素となりました。
10BASE5の歴史的意義
10BASE5は、ネットワーク技術の黎明期において大きな影響を及ぼした規格です。
発展の過程とその意義を振り返ると、以下の点が挙げられます。
当時のネットワーク環境との比較
- 従来のネットワークは、専用通信回線や限定的な接続方式が主流であり、柔軟性に欠ける部分がありました。
- 10BASE5は、同軸ケーブルを用いたバス型配線により、多数のホストを効率的に接続することを可能とし、ネットワークの拡張性が大幅に向上しました。
- 簡便な配線方法と標準化により、設置と運用が容易になったため、企業や研究機関などで広く採用されました。
後続規格との違い
- 10BASE5は、後続の10BASE2やツイストペアを用いたEthernet規格と比較して、ケーブルの太さや設置方法に特徴がありました。
- 同軸ケーブルそのものの物理的堅牢性や伝送特性は、後続規格とは一線を画すものであり、初期ネットワーク構築の基盤となりました。
- 後続規格は、設置の容易さやコスト面での改善が図られていますが、10BASE5が果たした役割は、歴史的にも技術的にも非常に大きな意義があります。
設置と運用上の注意点
10BASE5を利用する際には、ケーブルや接続機器の設置、そして運用において細かな注意が必要です。
各工程で適切な方法を守ることで、ネットワーク全体の信頼性が向上します。
タップとトランシーバの取り付け手順
タップとトランシーバの接続は、10BASE5の心臓部ともいえる部分です。
正確な取り付けが通信品質の維持に直結します。
具体的な接続方法の流れ
- ケーブル上に設置する場所を正確に決定し、専用工具を用いて所定の位置に穴を開けます。
- 穴を開けた部分にタップを取り付け、しっかりと固定します。
- タップにトランシーバを接続し、トランシーバケーブルで各ホストと接続します。
- 接続が完了した後、信号テストを実施し、正常に通信が行われているか確認します。
配線設計時の留意点
ネットワーク全体の品質を確保するためには、ケーブル配線の設計と管理が重要です。
信号減衰対策とケーブル管理方法
- ケーブルの曲げやねじれを最小限に抑え、物理的なダメージを防ぐ工夫が必要です。
- ケーブル同士の干渉を避けるため、一定の間隔を保ちつつ配線を行います。
- 長距離配線の場合、信号の減衰を防ぐために、延長距離を十分に考慮したレイアウトと必要に応じた増幅装置の導入を検討します。
- 定期的に配線状況を確認し、劣化や緩みがないか点検することで、安定運用が可能となります。
まとめ
この記事では、10BASE5がIEEE802.3で標準化された初期の10Mbpsイーサネット規格であること、太さ約1センチの50Ω同軸ケーブル(イエローケーブル)を用いたバス型配線の仕組みや、タップ・トランシーバの接続方法、ターミネータの役割が解説されています。
また、ケーブルの伝送特性や設置時の注意点、当時のネットワーク環境との比較を通じ、10BASE5の技術的および歴史的意義が理解できる内容となっています。